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仙台地方裁判所 昭和58年(わ)148号 判決 1983年9月30日

裁判所書記官

田中克俊

本店所在地

仙台市大和町三丁目五番一〇号

高木株式会社

右代表者代表取締役

高木英男

本籍

仙台市梅田町二五三番地

住居

山形県米沢市鍜治町四五四〇番地

会社役員

高木英男

昭和一四年一二月四日生

右両名に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官金子良隆、弁護人柴田正治出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人高木株式会社を罰金一、二〇〇万円に、被告人高木英男を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人高木英男に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人高木株式会社(以下「被告会社」という。)は、仙台市大和町三丁目五番一〇号に本店を置き、繊維製品卸売業等を営むもの、被告人高木英男は被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人高木は被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入の計上及び旅行参加料収入を除外し仮名定期預金を設定するなどの不正の方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五四年九月一日から同五五年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八九、〇八四、五五一円(別紙1修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が三四、六二三、九〇〇円(別紙3ほ脱税額計算書参照)であるにもかかわらず、同五五年一〇月三一日ころ、同市中央四丁目五番二号所在の所轄仙台中税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が零円で納付すべき法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告会社の右事業年度の正規の法人税額三四、六二三、九〇〇円を免れ

第二  同五五年九月一日から同五六年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が、五七、七六七、七四二円(別紙2修正損益計算書参照)で、これに対する法人税額が二三、〇八二、七〇〇円(別紙3ほ脱税額計算書参照)であるにもかかわらず、同五六年一〇月三一日ころ、前記仙台中税務署において、同税務署長に対し、所得金額が零円で納付すべき法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告会社の右事業年度の正規の法人税額二三、〇八二、七〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人高木の当公判廷における供述

一  被告人高木の大蔵事務官に対する各質問てん末書(三一通)及び検察官に対する各供述調書三通

一  星八重子の大蔵事務官に対する各質問てん末書(二通)及び検察官に対する供述調書

一  細川陽子(二通)、今野芳郎、高木忠喜(二通)、高木武男(二通)、片岡善宗、島立喜平、水池保雄の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の青色申告の承認取消通知書謄本

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書二通

一  大蔵事務官作成の簿外預金等調査書

一  大蔵事務官作成の簿外貸付金等調査書

一  検察官、被告会社、被告人高木及び両者の弁護人作成の合意書面

一  押収してある法人税確定申告書二綴(昭和五八年押第四九号の一、二)

(法令の適用)

被告会社に対しては、その代表者がその業務に関し判示各所為をなした場合であるから、法人税法一六四条一項により、判示各罪につきそれぞれ当該各本条である同法一五九条一項の罰金刑に処すべきところ、情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪の免れた法人税額の合算額の範囲内で被告会社を罰金一、二〇〇万円に処する。

被告人高木の判示第一の所為は昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一五九条一項に、判示第二の所為は昭和五六年法律第五四号による改正後の法人税法一五九条一項にそれぞれ該当するので所定刑中それぞれ懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右の刑の執行を猶予する。

(量刑の事情)

本件は、被告会社の代表者である被告人高木が判示のとおり、昭和五五年、同五六年の二年間にわたって、架空仕入の計上及び旅行参加料収入の不計上により、合計五、七七〇万円余の法人税の納付義務がありながら、いわゆる零申告をして全額を脱税したというものであり、その動機が会社の裏金をできるだけ多く蓄えて、被告会社のビルを建設し、会社の資金力や金融機関に対する信用をつけたいとの考えに出たものであったとはいえ、かかる行為は正しい納税者の均衡負担の利益を害すること著しく、その犯情には軽視できないものがある。しかしながら、被告会社は本件後、本税、延滞税を納付し、重加算税も支払う方針であること、被告人高木は、本件犯行後深く反省し、今後会社の経理については収入も支出もすべて帳簿に正しく記帳し、税理士からの監査も厳しくしてもらうと誓約しているなどの有利な事情も認められるのでこれらを併せ考慮して、主文のとおり量刑した。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 小島建彦)

別紙1 修正損益計算書

高木株式会社

自 昭和54年9月1日

至 昭和55年8月31日

(55/8期)

<省略>

<省略>

別紙2 修正損益計算書

高木株式会社

自 昭和55年9月1日

至 昭和56年8月31日

(56/8期)

<省略>

<省略>

別紙3 ほ脱税額計算書

自 昭和55年9月1日

至 昭和55年8月31日

<省略>

自 昭和55年9月1日

至 昭和56年8月31日

<省略>

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